最近、よく「コストを下げるならクラウドサービス(SaaS)だね」なんて声を良く耳にしませんか?本当にそうなのでしょうか。また、それだけでクラウドサービスに決めていいのでしょうか。それともオンプレミス(購入または自社開発したソフトを社内で運用すること)の方がクラウドサービスよりいいのでしょうか。下記にまとめてみました。
オンプレミスとクラウドサービスの比較
クラウドサービス | オンプレミス | |
---|---|---|
コスト | 月額課金・従量制・ユーザ数による課金など | ソフトライセンス購入だけでなく、PCハードウェアやサーバ費用、冷却施設を含むサーバ設置施設の費用など初期コストが大きくかかる |
カスタマイズ性 | カスタマイズは非常に限定的 | ソフト開発ベンダによるが、カスタマイズ可能 |
ハードウェア | ハードウェアもソフトウェアもクラウドサービスのプロバイダが所有・管理 | ソフトウェアを実行するためのハードウェアを自分たちで用意する必要がある |
セキュリティ | インターネットを通じて利用するため、それにかかるセキュリティリスクが存在する | システム運用をしっかりやればセキュリティ高く保つことができる |
モバイルでの利用 | iPhone, iPadなどからの利用も可能 | 多くの場合、iPhone, iPadなどからの利用はできない |
他のシステムとの連携性 | 連携性は限定的 | 連携性は高い |
管理・運用 | データを含めた管理と運用はクラウドサービス提供事業者によって行われる | すべての管理・運用は自分たちで行うことができる |
それぞれに一長一短なところがありますよね。では、オンプレミスとクラウドサービス、どちらを選ぶべきなのでしょうか。そのポイントをまとめてみました。
それぞれの言い分を鵜呑みにしない
オンプレミスとクラウドサービス、それぞれの会社は自分たちの製品がより良いと言います。特に、5年間など長期で利用した場合にかかる費用が引き合いに出されます。オンプレミスのベンダーがよく言うことには、「5年経てばシステムに投資した費用は回収できますよ」というものがあります。オンプレミスなら5年で投資費用が回収されるけれども、クラウドサービスの場合は何年経っても利用料を払い続けなければいけないから無駄であるというのがオンプレミス側の主張です。クラウドサービスによっては、利用ユーザ数が増えるとその分費用が上がる場合もあります。オンプレミスなら最初の投資だけですむというものです。
この場合、ソフトウェアのアップデートや、新しいハードウェアに対応する費用、データのバックアップや復旧にかかる費用や運用にかかる費用も含めて考える必要があります。それらを含めて費用を比較することが重要になります。
何段階かに分けて検討する
オンプレミスにするか、クラウドサービスにするかは何段階かに分けて検討するのが良いでしょう。クラウドサービスを検討する際には、そのサービスは自分たちの必要とする機能がちゃんとサポートされているか、そのクラウドサービスのプロバイダは信頼できる会社かを検討することが大切です。もし、そのいずれかを満たさない場合、オンプレミスの利用を選択するべきです。
もし、一社でもあなたが求めるシステムをクラウドサービスとして提供する会社が見つかった場合に次に検討するべきことは、そのクラウドサービスが既存のオンプレミスのソフトウェアシステムとの必要な連携が行えるかを確認しましょう。もし連携に問題がないのでしたら、そのクラウドサービスを選択するべきです。もしも複数のクラウドサービスがこの条件を満たすのでしたらより良いですね。その中からさらに良いものを選択できるわけですから。
コスト以外にも目を向けましょう
検討する際に、コストは大変重要な検討項目ですが、それ以外にも検討すべき項目があります。セキュリティやカスタマイズ性、社内・社外のコンプライアンスに合致しているかといった項目も見逃せません。クラウドサービスの場合、月額課金でシステムを利用することになります。この場合、ビジネスの成長とともに利用金額が上がることがあります。また、システムにて扱うデータはクラウドサービス提供会社が管理することになります。もしかしたらクラウドサービス提供会社のミスでデータが消失・流出してしまうことも可能性としては存在します。既存システムとの連携性やカスタマイズ性もカギになってきます。クラウドサービスの場合、オンプレミスのように会社毎の独自機能を入れることはカンタンではありません。たとえば自社のメールシステムや人事システムなどとクラウドサービスを連携させる場合、それらとの連携性がきちんと確保されているかどうかは導入のための重要な項目です。
一つの会社で複数のITシステムが稼働していることが当たり前となっている現在、それらのシステムの連携性がきちんと確保されていないとビジネスが止まりかねません。オンプレミスであってもクラウドサービスでも、導入に当たって提供会社からきちんと連携性についての確認・担保をとるようにしましょう。
クラウドサービスとオンプレミスの比較をする前に、自社PCの性能やHDD空き容量を確認しましょう
これは当たり前のことですが、クラウドサービスとオンプレミスの比較をする前に、自社のPCの性能やHDD空き容量はきちんと把握しましょう。そうでないと導入決定後にハードウェア性能が足りないがために新たにPC類を増強しないといけなくなったりします。
フリートライアルを活用しましょう
クラウドサービスの多くが導入前のフリートライアルを設けています。これを是非活用して、そのクラウドサービスが自社の求めるものにちゃんと合致しているか確認しましょう。オンプレミスの場合はあまり一般的ではありませんが、フリートライアル版がないか、または試用できないかを確認しましょう。
クラウドサービスとオンプレミスそれぞれの利点を把握しましょう
オンプレミスの場合、会計データのように社外には出したくないデータを扱うシステムや、膨大なデータをやりとりするシステムには向いています。一方クラウドサービスは異なるデバイスでの稼働や生産性の向上に関するもの、情報をマネジメントするものに向いています。それらの特性を考えて検討しましょう。
クラウドサービスとオンプレミスの利用者とのつながり方を意識しましょう
オンプレミスの場合、利用会社と提供会社とのつながりは、システムのライセンス購入時またはアップデート購入時に限られます。サポート契約をしている場合はそのサポート契約の期間中はつながりがありますが、その間サポート費用が発生することになります。
クラウドサービスの場合はシステム導入は利用会社と提供会社のつながりが始まる日といえます。クラウドサービスを利用している間、アップデートやサポートを通じて両者の関係は続きます。クラウドサービス提供会社は、顧客である企業の重要なデータをあずかるわけですから、信頼がなければ成立しません。クラウドサービスの利用を通じて、その信頼を築き上げていくことになります。