6月11日・12日にマイドームおおさかで開催された「ネット&モバイル通販ソリューションフェア2014 in大阪」に行ってきました。
ここにはEコマースをビジネスとされている方々へソリューション・サービスを提供している会社が一堂に会していました。2日間とも多くの方々が来場され、熱気を感じました。
基調講演やセミナー
基調講演やセミナーも数多く開かれ、アマゾンの前田さんからは、アマゾンはお客様第一主義であること、これまでのサイトへの機能追加や利便性向上はすべてこのお客様第一主義に繋がっていることがお話しとしてありました。たとえばカスタマーレビューでは、販売側はネガティブなレビューを表示したくないものですよね。販売の向上だけが目的であれば、ネガティブなレビューは表示しないようにする手もあるかも知れません。しかし、お客様の視点で考えると、ポジティブな情報もネガティブな情報もちゃんと知っておきたいもの。だからアマゾンでは、有益とされたポジティブなレビューとネガティブなレビューを対比する形で表示するようにしたのです。お客様の意見をきちんと見てもらい、納得してもらって購入してもらえる仕組みを作るようにと考えられているのです。
また、アマゾンは常に長期的視野に立って取り組みをしていると言います。目先の変化にとらわれず、長い目で見てお客様によいと思うことに取り組む。そのためにいろいろな新技術の研究にも取り組んでいます。現在アメリカで実験中の配達ロボットもそうですし、日本でも展開を進めているフルフィルメント・バイ・アマゾン(fulfillment by amazon: FBA)もそうです。
アマゾンの売り上げの内、今や40%が北米外から上がっています。日本のアマゾンでもアマゾン以外の出品者が多くの商品をアマゾン上で販売しています。このアマゾンマーケットプレイスに集まるアカウントは16.1万アカウント。今やアマゾン直販よりも規模が大きくなっているのです。
フルフィルメント・バイ・アマゾン
FBAは、このアマゾンに出品する出展者に向けての新たな取り組みです。これまでの商品をアマゾンで販売するだけでなく、商品の在庫をアマゾンが持ちます。そのため、在庫管理だけでなく発送プロセスもアマゾンのシステムを使うことができるようになります。消費者にとってもこれはメリットで、アマゾン直販の商品ではなくても、FBAの商品であればアマゾンプライムが使えるなどアマゾン直販と変わらないサービスを受けることができるのです。
EC成功のポイント
イーコマース事業協会の代表理事・岡本さんは、Eコマースをされている業者にとってもイーコマース事業協会参加のメリットとEC成功のポイントを話されていました。EC市場は現在約10兆円規模。これは数年前の2倍です。また、今後10年以内に20兆円になると言われています。これからもどんどんと成長する産業です。このECで成功するポイントは、販売するものが何かを知ること。買いたい人がいるけれども、売っているところが少ないものは大きな狙い目です。この業界でビジネスをする人は、なにがしか売りたいものを持っている人なので、それがこの2つに合致するかどうかを見極めることが大切になります。
また、EコマースはDBマーケティングです。たくさんの人にサイトに来てもらうよりも、本当に欲しい人に来てもらうことが大切です。サイトを宣伝する際にはターゲットを絞って広告展開することが重要です。
Eコマースの成功の秘訣としては、下記が上げられます。
- ブランド理念を持つ
- 売上より大事なものを忘れない
- はじめからの利益管理
- バックヤードを拡充する
- 売上の拡大意識を持つ
また、受注対応はとても大変であり大切なのことなのです。きっちりと受注対応ができる体制を整えて進めましょう。
東急ハンズが進めるオムニチャンネル
東急ハンズの緒方さんの講演では、東急ハンズが進める取り組みについての話がありました。これまで東急ハンズではネットやITについても様々な技術や要素に取り組んできています。そこで知ったことは「最高の技術が最高のサービスではない」と言うことです。たとえば以前、東急ハンズの店員にクレジットカード決済機能を持ったスマートホンを持たせたことがありました。お客様の購入を、ポケットから取り出したスマホで決済したのですが、これがお客様からは不評でした。ポケットから取り出された端末で購入の決済をされることが不快と感じられたのです。もちろん、その後すぐにこの決済方法は取りやめになりました。今ではこの手法はアップルストアで行われたりしています。もしかしたら今ならば違った感触を消費者は感じるかも知れませんが。
東急ハンズはツイッターアカウントだけで3つのアカウントを持っています。これはそれぞれ、ヒト・コト・モノとテーマを分けて運用されています。実は他にもツイッターアカウントがあります。それは各店舗が運営するツイッターアカウントです。このアカウントでは、店舗に密接した会話が繰り広げられます。「江坂店に○○はありますか?」などと質問すれば、その店舗のツイッターアカウントから返事があるという具合です。ツイッターは気軽に企業と消費者のコミュニケーションを築く重要な場です。消費者はカジュアルにその企業と話ができるだけでなく、その会話は他の消費者も見ることができます。会話を元に、その商品や関連商品に興味の輪が広がるのです。
東急ハンズはツイッターでの話しやすさを重視している。 Share on Xそのため、東急ハンズには日々多くの消費者が「○○はありますか?」との質問が入ってきます。このユーザ体験をさらに広げようとコレカモ.net(すでにサイトは閉鎖済)を開発しました。
サイトではコレカモさんがユーザからの質問に対して該当する(可能性のある)商品を教えてくれます。ユーザは時には思ってもいない商品を紹介されることもありますが、それが新たな興味・購買行動に繋がることもあるのです。また、これのコレカモさんのキャラクターを東急ハンズのサイトにも応用しました。東急ハンズのトップページにて「今、コレ売れました」をリアルタイムに表示するようにしたのです。
これにより、東急ハンズを訪れるユーザがより商品に興味をもったようで、直帰率が5%改善されました。(当たり前のことではありますが、何かの改善を行った場合、本当にそれが有効に機能しているのかを調べることは大変重要です。EC事業者の中には日々の忙しさに注力するあまり、データ分析に十分な時間をとれない人も少なくありません。けれどもこれがとても重要なのです。)
さらにこの商品の魅力をより深く知ってもらうという観点を推し進めるところから、東急ハンズはイッピンマーケットというコーナーを作りました。
イッピンマーケットは東急ハンズのサイト内に作られた一つのコーナーです。ここでは東急ハンズがセレクトした、東急ハンズの目で、東急ハンズに来られるお客様がきっと興味を持つであろう商品にスポットを当てて、ひとつひとつの商品を丁寧に取り上げています。
マルチチャンネル展開
東急ハンズは、自社サイトだけでなくマルチチャンネルへの取り組みもおろそかにしません。楽天・Amazon・Yahoo!といったEコマースのモールへも出展をしています。最初は自社サイトのみでしたから、マルチチャンネルへの取り組みの是非は社内で議論となりました。マルチチャンネルが自社サイトへの消費者の訪問を減らすのではないかと危惧されたからです。結果、マルチチャンネル展開前に比べて訪問者数はわずか-2%となりました。東急ハンズのサイトを訪れる客数はほぼそのままに、マルチチャンネルで展開した分が売上として上乗せされる形となったのです。
自社サイトとマルチチャンネルは、いわば本店と支店のような関係と言えるかも知れません。支店を増やすことそれ自体は本店の売り上げを阻害するものではないですよね。ネット通販でも、きちんと棲み分けをすることで通販サイトのマルチ化は有効だと言えます。
オムニチャンネル
東急ハンズの考えるオムニチャンネルとは、上記の取り組みにとどまりません。オムニチャンネルの意味として、ネットとリアルの融合を多角化したものも含めます。いわばO2Oの拡大版と言えます。これにかかる取り組みとして、サイトで注文した商品を店舗で受け取れるようにしたのが一つの成功事例です。顧客を店舗に誘導できたことは、発送コストを抑えられただけではありません。店舗を訪れた消費者は、注文商品の受け取りだけでなく追加で2点・3点と商品の購入を進めます。これらの取り組みが東急ハンズのブランド力を高めているのです。